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段ボールに用いる糊の変遷

1900年代初頭、でん粉を加熱して糊化したもの(いわゆる煮た糊)に替わり、珪酸ソーダ(水ガラス)が使用されるようになりました。しかし、生産量も少なく生産速度も遅い時代には余り問題とならなかったアルカリステイン(※)が、段ボールの見栄えを悪くするだけでなく、商品にも悪影響を及ぼすことが問題視されるようになりました。

1935年、スタインホール法が開発され、生産速度の高速化と相まって、珪酸ソーダからでん粉接着剤への転換が始まりました。欧米では、開発当初からコーンスターチを使用しましたが、日本では調味料としてグルタミン酸ソーダの増産期であり、でん粉業界はその副産物である小麦でん粉を強力に段ボール業界に売り込み、その地位を確立しました。
しかし、グルタミン酸ソーダの製法が、小麦粉からの抽出法から醸造法などへと合理化されるにしたがって、小麦でん粉の生産量が減少する事態が生じ、1965年頃にはほとんどコーンスターチに取って替わられました。

スタインホール法におけるでん粉接着剤の処方は、アルカリを加えた加熱済みのでん粉と生のでん粉の混合物(懸濁液)を用いる方法です。この処方によるでん粉接着剤は、貼合ラインの熱と圧力の作用で、急激な粘度上昇を伴って糊化し、初期接着力が発生します。この初期接着力によって、未乾燥状態のライナと中しんとの接着部分を強固に保持し、高速貼合であっても段がはがれることなく、乾燥工程に送り込まれて段ボールを完成することができました。
でん粉の持つ特性をうまく引き出すことによって、高速マシンにおける接着にも対応するスタインホール法の基本的な処方は、50年経った現在でも活きており、その性能とコストは、他の接着剤の追随を許さないものとなっています。

また、スタインホール法の糊処方と併せて、ヘンリープラット製糊装置及び二重粘度システムもまた、高速化に大きく寄与しました。これ以降、ヘンリープラット製糊装置のツータンク法に対してノーキャリア法、ワンタンク法、プレミックス法など製糊のための処方や装置が各種開発されたが、でん粉・かせいソーダ・ほう砂(ほう酸)を使用する基本的な処方には変わりなく、現在に至っています。

※湿度により水ガラス中のアルカリが遊離し、段ボールの段頂に沿ってライナ表面に浮き出す現象。
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